イロコイ達は戦いに敗れてしまった…。
しかもよりによって「椰子の木」にである。
「あんな魔物までいるとは、面妖な…」
とはいえ、相手は椰子の木。
普段そこから動かないようなものなだけあって逃げるのは安易だった。
「何なんだあれは…食虫植物の部類か…?」
「食虫とな…?」
「虫や小動物を甘い蜜などでおびき寄せて捕食する植物だ」
「ああ、確かに椰子の実で誘引して、攻撃してきたあたりそれっぽいですねー…」
「イロコイさん物知りっス!」
小霧に妙に納得するような素振りでイロコイの話に賛同していた。
セシリアとクトネもなかなかに興味津々といった様子だ。
「ふふ、植物には詳しいほうだからな」
イロコイは静か に笑いを見せながらも、しっぽをぱたぱたさせていた。
学者の身としては、わからないことを教えることは楽しいようだ。
「そういえば、ソリーリャちゃんとアノちゃんは…?」
「ん、ソリーリャなら…」
「……ヤシー」
「ソリーリャ…いい加減あきらめろ」
普段無気力なくせに、食べ物への執念だけは恐ろしい妖精である…。
食べたかった…。
「ソリーリャさん…またお弁当作ってあげるっスから…」
「!」
しょんぼりした様子から、4つ耳をピンッと立てて目を輝かせた。
さっきまでの死んだ魚のような目が嘘のようだ。
「ははは、ソリーリャはわかりやすいであるな!」
「ひゃー!そんな反応されたらたまらないっス!はりきって作るっスよー!」
両手ですくいあ� �るようにしてから、ぎゅーっとソリーリャを抱きしめる。
「なんかすっかりお決まりのパターンですね」
「そうだな…」
一体どこまで人を魅了するというのだろうか、あの女狐め…。
冗談はさておき、イロコイはその様子を見て何か疑問を抱くように首をかしげはじめた。
「…ソリーリャはなぜ4つも耳があるんだ?」
いつも見ている光景だからこそ、他のところにも目が届くことがある。
今更なところがあるが、嬉しそうにピクピクと動く4つの耳を見て、ソリーリャの生態が気になり始めていた。
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「そりゃぁ、混け……ハーフだからじゃないかねー?」
「だが…ハーフだからといって4つも耳があるものか…?おかしくないか?」
「うーん、見た感じではハーフなんですけどね」
「見た感じでは…?」
「あ……、いえいえ、こちらの話ですよ!私がそう思い込んでるだけかもって話ですよー」
ちょっと引っかかるような言い方であった。
まるで、種族というものをはっきり見分けられるような自信に満ちた台詞…。
そういうものが見れる目をもっているのだろうか…?
「まぁ、今度本人から聞いてみれば良いことだな、今はそっとしておこう」
セシリアにあれだけなでなでもふもふされている状況ではとても じゃないが聞くことはできない。
「羨ましい…!」
「どうした、小霧?」
「な、なんでもないですよ!」
なんでもないとはいうが…
巨大ハムスターの件で小霧がもふもふに目がないことは知っている。
もう少し素直になればいいと思うのだが、恐らくチームリーダーとしての自覚を維持したいためだと思われる…。
・・・
戦いには負けたが、みんな思ったり元気そうである。
「このパーティでの初敗北はどうなるかと思ったが…うまくやれそうだな」
イロコイは妙に冷静であった。
いずれは負ける日がきて、撤退を強いられることもあることを予想していたかのように見える。
一度はインディアン戦争で大きな戦いをした身…その経験故にだろうか。
「さて…」
あの場には� ��一人だけいない者がいた。
イロコイはその一人の居場所をすぐに見つけ出した。
「アノーサ」
「……」
足をのばして、ぺたんと地面に座って川の流れを見つめているアノーサがそこにいた。
表情は見えず、後ろ姿を見ただけでだが、なんとなく落ち込んでそうな雰囲気がした。
「アノーサ…聞こえているか?」
「きこえているわ、おおかみさん」
「お、狼さん…間違いではないが…」
「ぼうぐやさん」と呼ばなくなったと思いきや、今度は「おおかみさん」ときた。
防具屋扱いよりはマシだが…なんだろう。なんかケダモノ扱いされてるようなこの感じは…。
アフリカ系アメリカ人のビュー内の大恐慌
「大した怪我はしてないようで幸いだった、調子はよさそうだな」
「あたしはいつもどおりげんきなようせいよ、おおかみさん♪」
立ち上がって、くるりと半回転。
相変わらず光の篭ってないその瞳でこちらと目をあわせてくる。
「まぁ、こういう戦いもあるってことだ、勝ち続けるってことはなかなか難しいもので…」
「わかってるわ」
「…そうか」
思った以上に、落ち込んでる様子は見せていない。
アノーサは、生まれたてに近いほどの幼少で、敗北を知らないようなものと思っていた。
そうとなれば、ショックは相当大きいはずなのだが…。
「かあさまや、ねえさまからきいていたの、まけたこともい� �ぱいあったって」
「……」
「でも、それをのりこえたからつよくなったといってたわ」
「ああ、敗北のほうが知るものも多い…意外とわかっているのだな…?」
「うふふ、かあさまのいれぢえってやつかしら?」
だから、落ち込まないというのだろうか。
しかし、そんな考えができるのはよっぽどできすぎた大人くらいなものだ…。
アノーサはまだ…。
「それよりも、いまこうしてみんなとぼうけんできることが、たたかうことがたのしいわ♪」
「…戦いが楽しい、か」
アノーサは、戦うことを楽しんでいるというのだろうか…。
イロコイはその様子に少々困った顔を見せた。
「戦いは、楽しむものではない…辛く思いつつも、生きるために戦うものだ」
「…いきるため…?� �くわかんない、たのしんじゃいけないの?」
「…アノには、まだわからないかもしれないな、気にしなくていい」
「むずかしいことかんがえたら、じんせいそんしちゃうわ♪」
「よりによって、ボクにむかってそれを言うか…」
勝つことも、負けることも、冒険という名の物語ということだろうか。
まるで、自分が主人公でゲームをやっているような考えをしている。
スキップしつつも、羽根をぱたぱたさせてふわふわと滑空しながら進み、イロコイの隣を通り過ぎる。
「……あのやしのきさんは、つぎにあったときはすりつぶしてしまいしょう」
「!?」
ワイドは、フロリダの状態ですか
すれ違いざまに、恐ろしいことを口にだした気がする…。
まるで人が変わったような声…イロコイはその台詞に背筋を少しゾクッとさせた。
「…そうだな、とろけるように甘いジュースが作れると良いな」
「うふふふふ、たのしみだわ♪」
・・・
「あ、アノちゃん、イロコイさん、おかえりっス!どこいってたんスか?」
「いぬのおさんぽよ♪」
「誰が犬だ!?」
「きゃーたべられちゃうー♪」
「イロコイさん、食べちゃだめっスよ!」
「食べないから!?」
二人でいた時とはまったく別人である…。
イロコイは疲れたようにため息をはいて、アノーサから離れた。
(アノーサ…一体なんだというの� ��…?あれではまるで狂人だ…)
一体、あれを産み、育てた母親はどんな人物なのだろうか…。
母親も狂人としか思えない、と、イロコイは思っている様子で考えこんでいた。
「…まぁ、このメンバーはみんな訳有りのようなものか…」
パーティに合流して、再確認するように全員の顔を見ていく。
アノーサは先程の通り危険な雰囲気がする。
小霧も、何か企んでいる様子がする。
ソリーリャも何か禍々しいものを感じる。
クトネも思えば剣の妖精…武器に宿った妖精となると何か危険な力を持ってそうではある。
「…そうだ、ボクの村では、こんなの当たり前の光景だったじゃないか」
このパーティで、うまくやっていけるのだろうか。
わずかに不安を感じていたイロコイだったが…、今考 えると、自分の住んでいた村ではこのような光景が日常だった。
種族も性格も違えど、森を愛し、森を護るものが集まっていた。
同じ目的を持っている…、それなら、きっと大丈夫。
「ソリーリャちゃん、ぶどうっスよー、あーんするっス!」
「あーん」
「かわいいっスーーーー!!」
「……」
一人だけ、そんな心配もしなくていい人物がいる。
妖精とは、小さくてかわいい存在なのが一般的である。
それ故にそのパーティのマスコットキャラ、癒し系になることも多々あるだろう。
しかし…このセシリアという唯一妖精でない獣人…この人物は…。
「セシリアはこのパーティの癒し系だ」
「え?い、イロコイさん突然何を…」
「うむ」
「うむ」
その言葉に、クトネと小霧も頷いた。
セシリアはこのパーティの癒し系、満場一致の瞬間であった…。
・・・
イロコイ・ミュウ・アエンナの婿探し日誌
セシリアはかわいいな、もふもふ。
…ここにきて初めての敗北…どうなることかと思ったが案外すんなりと持ち直したようだ。
しかし、アノーサは一体どうなっているんだ…? あれは子供というよりは…狂人だ…。
…やはり、この戦闘にありふれた冒険に子連れは教育によくないのではないだろうか…。
戦いは、楽しむものではない…辛く思いつつも、生きるために戦うものだ…。
…� �ってもわからないだろうな、戦争も、殺戮も体験していない子供には…。
・・・
今回の戦闘理由
「ワカメ食べたい」
「よーし、こんな時はみんなでワカメマンを呼ぶんだ!」
「ワカメマーン!」
(うみねこに食われながら飛んでくるワカメマン)
「ワ、ワカメマーーーーン!!」
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